【2009年の記事をリライト】
某SNSに上げていた記事を読み直してみたらこれがなかなか面白い。
せっかくなのでリライトしておこうかなと。
4つ分ぐらいの記事をまとめているのでちと長いですがそこはご勘弁を。
ランドスケープのアップライトは一時期すごく憧れましたね。
なんと言ってもあのルックスが素晴らしい。
まさにスマートコントラバスって感じ。
一方、音の方は意外とモダンなんですよね。
ヤマハのSLBと比較するとだいぶキャラクターが違う印象。
明らかにクラシックな風貌、アコースティックなルックスをしているランドスケープの方が新しい音がしてる気がするという、なかなか面白い話。
でもだからこそ、コントラバスの代用ポジションとは異なるEUBの一つの完成形、方向性を示しているのかもしれません。
今でもちょっと興味ありますしその意味でも今回、ランドスケープについて触れた過去記事をまとめておこうかと思います。
LANDSCAPE 納浩一さん アップライトセミナー
LANDSCAPEのデモイベント
イケベ楽器・秋葉原店で行われた納浩一さんのセミナーに参加してきました。
と言っても本日の主題はランドスケープのEUB。
この楽器のデモイベントという感じの内容。
そのためエレベとウッドの出番はなく、納さんが実際に使用しているランドスケープの紹介、それを使用しての演奏と質疑応答がメイン。
イベントの趣旨からは脱線だったとしてもファンとしてはやっぱり、御馴染みの機材での演奏も聴きたかったところかもしれません。
でもま~あれです、
「さすがは納浩一!」
としか言いようがありませんでしたね。
エレベでも相当きついだろってテクニック。
まだ使い慣れてないであろう楽器でそれをバンバン叩き出す姿に驚愕。
見応えも聴き応えもあまりに十分。
非常に満足できる内容のイベントだった次第。
実はEUBには興味がなかった?
納さんがランドスケープを使うようになったきっかけについて。
なんでもベーマガの企画でEUBを10本ぐらい試奏する機会があったらしく、その中ですぐにピンと来たのがランドスケープだったみたいです。
かなり以前、某社のEUBのプロトタイプを試されていたことなどもあるそうでして、経験に基づく色々なアドバイスを送ったり協力もしていたとのこと。
ただ、EUBなんてほとんど存在していなかった時代の話。
製作のノウハウがほとんど0の状況からの出発と仕上がり。
その為、本職のプロが第一線でバリバリ使うには厳しい印象を受けたそうな。
面白いかもしれないけど自分にとっては必要なさそう、EUBに対するそんなマイナスなイメージがその際に出来てしまった。
しかもそれは最近の進化してきた数々のEUBを弾いても心境にあまり変化が生まれなかったそうです。
言うまでもなく本物のウッドをバリバリ弾きまくれるのが納さん。
単なる便利品や代用品レベルじゃ駄目だってことなのかもしれません。
実際、納さんがEUBを弾くイメージってありませんでしたし、だからこそランドスケープが気に入った理由は気になってしまいますよね。
LANDSCAPEの魅力
EUBに対しそんな厳しい印象を持ってしまった中、なぜランドスケープのベースに惹かれるものがあったのか?
・とにかく出音とサスティーンが良い
・ボディがしっかりしていて生楽器のニュアンスが出せる
・ルックスも良いし新しい楽器としての可能性を感じる
ベーマガの試奏企画の後、担当者の方とすぐ連絡を取ったという話も実に印象的。
そしてその後の打合せや提案の結果、
『SWB-Master』
この最上位機種が誕生したようです。
ウッドの方をバリバリ弾ける方がこれだけ積極的に動いた事実。
それが本当にびっくり仰天。
余程の魅力と可能性を感じたんだろうと興味を惹かれます。
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驚きのセットアップ
納さんが使っているランドスケープ。
弦高などのセッティングは御自身のウッドとほぼ同じぐらいのセッティングにしてあるらしいのですが、これがま~、結構な衝撃でした。
実際に弾かせてもらいましたが、あまりに弾きやすくて驚愕。
エレベ顔負けの低弦高かつ音づまりせず、痩せてる感じもないってのが凄い。
それだけでも本当、あの楽器のクオリティと素性の確かさを感じました。
で、またまた驚いたのがPUとプリのセッティング。
ほとんどマグネットPUの方がメインであるって事実。
割合で言ったら『マグネット8:ピエゾ2』ぐらいのセッティングで使っているとのことでした。
ウッドをずっと弾いてきた納さんのことですから、EUBでもピエゾをメインに使っているのだと勝手に思っていた為、個人的にかなり予想外だった次第。
それに加え、本体で低音をかなりブーストしているその音づくりにもびっくり。
このあたりやっぱり、自分のようなウッド素人には想像もできませんでした。
浅はかなイメージと先入観の未熟さ、それを思い知った気がします。
実際、マグネットオンリーでも普通のエレベとは明らかに異なる音がしていたのが非常に印象的。
これに関しては、自分が所有するジラウドのW-BASSの音にも繋がるものを感じたかもしれません。
あれも本当、ただ単にソリッドのエレベに同じPUをのせただけでは、ウッドのようなサウンドにはまったくならないとのこと。
生音からして別物。
だからこそオリジナルサウンドになる。
アコースティックでありながらエレクトリック。
エレクトリックでありながらアコースティック。
ランドスケープも上手いことそのバランスを取っている楽器ですね。
ヤマハSLBとの違いは?
さすがは楽器店でのイベントと申しましょうか、実際にSLBとの比較をしてくれたのも面白かったです。
自分みたいなアップライトど素人からすると、ヤマハのサイレントベースの方が目的に合っているんじゃないかとか思っちゃうところですが、話はそう単純ではないから興味深い。
ウッドそのものの弾き心地を求めるのであれば確かに、ヤマハの再現性に勝てるものはなかなか存在しなそうです。
弓でも問題なく弾けるし消音楽器としても優秀。
あのフレームの完成度は本当に素晴らしい。
一方、ピチカートでのサウンドの方はと言うと、ほとんどボディが無く弦高も高いセッティングに加えピエゾPU1個のヤマハでは、納さんが求めるサウンドとはちょっと方向性が違うものになってしまう様子。
納さん好みのアコースティックな質感や豊かなサスティーンなどを求めた場合、サウンド的にはランドスケープの方が圧倒的に好きな楽器であるとのことでした
ゴーストノートを多用するスタイルについてもそうですし、ジャズだけにとらわれない活躍をされている方ですから、 やはり求めているものはウッドの代用ということだけではないんでしょうね。
新たな楽器としての可能性、アコースティックとエレクトリックの良さを持ち合わせている意味で、ランドスケープが非常に面白い存在になるのかもしれません。
電気楽器でありながら生楽器のようなニュアンスを持ち、箱鳴りも含めたパーカッシブなサウンドも表現できると考えると非常に魅力的に見えてきます。
エレクトリックなサウンドとパンチ
納さんが使用していたアンプは以下の通り。
・Markbass LMK
・EBS NEO210
完全にエレクリックベースなシステムと言いますか、これまた強力にパンチの効いてそうな組み合わせでした。
【マグネットPUメイン+ベースブースト&ハイカット】
このセッティングを見てもそうですが、音量もさることながらかなりの音圧とパンチを感じるサウンドだった次第。
アップライト・EUBとは言えやはり、完璧なるアコースティックサウンドそのものを追求するような使い方はしていないように思えます。
あくまで自分の気に入ったサウンド、ニュアンスこそを大切にしているのだろうと想像。
アップライトを弾けない人間からするとついつい、「太くまろやかな低音を出したい」みたいな憧ればかりを考えてしまいますが、それはごく一面しか見てないってことなのかなと。
ランドスケープがエレクトリックとアコースティックとその両面を高度に融合させている楽器なのだとすれば非常に面白い。
ウッドの物真似で終わる楽器ではないと、より興味が湧いてきます。
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LANDSCAPEは面白いベース
個人的な印象
自分で書いたものに興味を惹かれてしまう、物欲を刺激されるというのもおかしな話。
まぁでも本当、ああいうアコースティックなルックスのアップライトが弾けたらさぞ楽しいだろうなとは思っちゃいます。
ランドスケープの個人的な印象を言うと、想像以上にエレクトリックな方向のサウンドだったり、うるさいプレイもしたくなる楽器かなと感じました。
繰り返すようですが、結構、モダンなサウンドの気がするんですよね。
たとえば、古いジャズとかで聴けるようなボンボン言ってる感じの音。
ハイポジションではポウンって短く響く感じの音。
ああいうのが欲しいんだったらSLBの方が良いんじゃないかと。
またはアルターエゴとか。
一方、もっとサスティーンを効かせたい場合、極端な話、エレクトリックのフレットレスのようなニュアンスも出したいようだったら、ランドスケープの方が相性良いかなって印象。
マグネットPUなこともあってジャンル問わずな可能性も感じますし、ピエゾとのバランス調整、プリの操作など、それを手元で簡単にできるのも大きい。
「アコースティック」と言うとどうもこう、何もいじらず自分の手だけで音をつくるのが格好良い、正しいことだと認識されがちですが、積極的な音づくりの面白さや強みを見失ってしまうのもどうかと思うわけです。
大音量での利点を考えてみてもEUBはただの代用品で終わるものではない。
コントラバスだけが本物とかEUBはどうやっても劣っている存在だとは言えませんよね。
実際、目の前でバリバリ弾きまくる納さんの姿を見てしまっていますし、「こんな弦高下げられるの!?」って衝撃も受けたり、多くの意味で可能性を感じる次第。
10年近く経った今、納さんがどう使用されているかは分かりませんが、EUBがどんどん面白い存在、使える楽器になってきているのは間違いないでしょう。
一方で気になるのはやはり、 ボディレストの存在。
いくらランドスケープがよくできていると言っても、細い金属のバーで支えるって感じなので、もうちょっと楽器との一体感みたいなのが欲しいのも正直な話。
それも含めての独特な弾き心地、お手軽感なのかもしれませんが、あれにもうちょい色気があったらなって考えちゃいます。
これについては恐らく、どの会社も苦心している部分なんじゃないかと想像。
今後の進化に期待したいポイントですね。
Artist Master Gambaの違いって?
実は三種類が存在しているランドスケープのSWBシリーズ。
国外モデルを含めるとさらにあるみたいですがそれについては置いておきます。
【SWB Artist】
これがランドスケープの基本モデルになるんでしょうかね?
他のものと比較するとネックの仕込み角がかなり浅い印象。
コントラバス基準で行くとネックにかなり斜めの角度が付いているものなのですが、これは指板がそのまま下にストンと落ちているような感じ。
ゆえに好みもハッキリ分かれるのかもしれません。
「いつかウッド弾いてみたい!移行したい!」なんて考えている場合、物凄い違和感になる可能性もありそうですし、感覚の切り替えが難しいところはあるのかなと。
逆にそんなに気にしないのであれば、Artistの方でも十分いけちゃうことも考えられる為、このあたりについては実際に弾いてみるしかないでしょう。
スペック的に明らかに劣っているとか、廉価版みたいな位置付けではないはずなので、ある意味、一番手頃で美味しいモデルと見ることもできそうです。
【SWB MASTER】
Artistをコントラバス基準のネック仕込み角にしたのがこのMaster。
前述した通り、納さんがランドスケープにコンタクトを取ったことで生まれたのが、このモデルになる模様。
より本格的なアップライトベースのニュアンスを求めたり、しっかりした弾き心地にしたいのであれば、こっちの方が的確な楽器になるんじゃないかと。
これが登場して以来、もはやArtisitよりこっちの方がスタンダードモデルのようになってしまった感もあったりして?
【SWB GAMBA】
一番高いモデルになるのはこれなのかな?
何が違うかと言うと、このモデルにはカッタウェイがありません。
ArtistとMasterの方はエレクトリックベース奏者の方にも配慮してか、ネックジョイントにカッタウェイがあるのですが、これに関してはちょっとターゲットが違うって感じなのかもしれませんね。
バイオリンやコントラバスのそれって感じです。
ちなみに、リアリストPUを搭載したGAMBAなんてのもある様子。
通常の場合、フィッシュマンのBP100というピエゾPUがのってるのがSWB。
定番ではありますが好みが分かれることで有名でもある印象があります。
実際、自分も所有していましたが、駒の先の方に取り付けるタイプのPUな為、かなりアタッキーだったりシャリシャリ感が強い特性かなと。
良く言えば抜けてくる音、パーカッシブな特性に優れていますが、量感豊かでふくよかなサウンドを狙うのは難しい面を感じます。
その点、リアリストは生音のようなナチュラルな方向性で評判の良いPU。
フィッシュマンとブレンドして使用している人もいたり、対極のように位置付けられているとも言えるかもしれません。
どちらが良いかは完全に好み次第ですが、こういった選択肢も増えているのが非常に面白いですよね。
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思わず弾きたくなる存在
最後になりますがこの楽器の大きな魅力ってやっぱり、
『見た目』
これに尽きるんじゃないかと。
馬鹿にしてるようにも聞こえてしまいそうですが大真面目な話。
EUBってそこがクリアできないものが多い、その魅力がないって致命的だと思うんですよね。
パッと見て、
「おっ!?」
ってなるのは本当に大事。
もっと極端な話、
『その気』
になれるかどうかが全てと言っても過言じゃない。
やっぱり、アップライトベース弾いてる姿の存在感って凄いと思うんですよ。
言葉は悪いようですが、素人目に見ても「え?なになに?あの楽器すごくない?」って興味を惹かれるポテンシャルってそれだけで武器になる。
「かっけぇ!」
自分がこう思える楽器を弾くって大切ですよね。
「アップライトベースが弾きたい!」って気持ちにはそういう素直な憧れ、欲望みたいなのも詰まっているもの。
その衝動に従ってみるのも大いに有りではないかと。
バリバリ使いこなしている人は少ないであろう分、それだけの可能性が眠っているし、様々なチャンスもあるはず。
一筋縄ではいきませんが、チャレンジしてみる価値は絶対にありますね。